下村: やっぱりその行動力がすごいですよね。とたえば路上演奏するのに躊躇や怖さはなかったですか?
中島: 怖さはないかな。東京でもやってたけど、聴いて欲しい時は渋谷に行くんだよ。だけど 若者ばかりだからお金が入らない、だからお金に困ると銀座に行く。でも銀座は怖くて縄張りがあるからすぐに出れるように車にエンジンをかけっぱなしにしておくんだ。おっかけられたこともあるよ。銀座はお金がよく入る。気持ちよく酔っ払ったおじさんだから入れてくれる。日本でこういう経験をしてたから、バンクーバーでは平気だったかも。こっちはスカイトレインの駅前なんかはオーディションがあって、路上演奏で生活したい人とかがやっていて、色んな人がいるよ。僕は情報が欲しくて路上演奏してたから。美術館の前で2年ぐらいやって、グランビルアイランドで長いことやってた。
下村: 現在はどんな活動をされているのですか?
中島: 今は5、6バンドで演奏していて、あとは音楽を教えてるよ。アイリッシュバンドを10年以上やってるんだけど、それは路上演奏でハリー青木さんが紹介してくれたルーマニア人の有名なジャズバイオリニストつながりでアイリッシュミュージックをはじめて、そこから繋がってやってることが結構多い。カナダはイギリスとの関わりがあるから、公式な行事とかでの演奏も結構多くて。カナダ人と混ざってイギリスの伝統的な音楽をやっている。ロックとかジャズとかファンクミュージックをミックスしたバンドがあって、すごい楽しい。
下村: アイリッシュミュージックもされているんですね!
中島: ハリー青木さんの紹介で出会ったジャズバイオリニストのお弟子さんと知り合ってお互い気が合って何かやってみようってなって。アイリッシュの人だとアイリッシュの音楽を普通に弾い てしまう。でもその人は、そこにロックとか色んな要素をミックスして作りたいって人だったので、逆にアイリッシュミュージックをあまり知らない人の方が良いということで僕が呼ばれたんだろうね。真面目な音楽でなくてみんなが騒いで踊れるような音楽をずっとやってる。
「日本人の混ぜる発想」と「枠のない音楽」が生み出す、自由な音楽。
下村: 他にも違うバンドで音楽やられているんですか?
中島: グランビルアイランドでたまたま知り合ったブラジル人のボーカリストにバンドに入らないかと声をかけられそこでたまたまブラジル音楽に入った。その時は一生懸命ブラジリアンミュージックをやってた。今は他の音楽を色々やってるんだけど、その1つに沖縄の古典音楽ってのをやってる。みんな沖縄の民謡って言ったら知ってるんだけど、数年前に沖縄の古典音楽をやってる人と知り合ってそれまで聴いたことなかったんだけど、それがあんまりにも良くて。今秋に沖縄に行ってCDを作る準備をしてるとこなんだ。他にはイラク人とプロジェクトを始めてイラクの音楽を面白い形にしたりとか。あと全然違うんだけど絵を書いている人とコラボしようとなって今考え中なんだ。
下村: 中島さんが津軽三味線とのコラボをされているのを聴いたことがありますが、中島さんは何かを1本だけというよりは、何かと何かをミックスされるのが好きなんですね。
中島: そう!あれも面白くて、初めはちょっと勇気がいったんだけど、津軽三味線とギターとパーカッションでバンドをやって。もとからそういうのが好きなんだけどけどカナダの影響もすごく強くて。ここ移民の町でしょ。例えばブラジル音楽をどんなにうまく演奏しても、ブラジルの祭りとかがあるときは絶対 僕は呼ばれない。なんでかって言うとブラジル人じゃないから。ブラジルのイベントでは、ブラジル人が音楽を弾いているのが見たい。こっちの人は基本的に生まれ故郷の音楽をみんなやっててブラジル人はブラジルの音楽をやるし、ブラジル人は三味線をやらない。ブラジル人はアイリッシュをあんまりやらない。アイリッシュの人はアイリッシュをやる。逆にブラジルの音楽はあまりやらない。基本的にみんな出身の音楽をやるんだけど、僕は日本の音楽を全然やっていないなと思って。それもあっていろんなものにチャレンジしてみたら、それがはまって。
下村: いい意味で異端児ですよね、自由でユニークで。自分は自分というものを持って、他の人を巻き込んでいく。ブラジル人だからブラジル音楽アイリッシュだからアイリッシュ音楽ではなく枠を抜けていく感じで。
中島: そうだね。ギターという楽器を使って色んな所に行くのが良いし、しかも個性的じゃん。こっちはみんな個性的だから。僕はブラジル人じゃないから楽しくっていうのはあってもその文化を紹介しようとかって言うのは全くない。やっぱり僕は日本人だなあって思って。日本人ってミックスするのがすごく上手。料理にしても日本人はゼロから何かを作るより、何かを集めてきて新しいものをヒョイって生み出すのが上手。僕の音楽も多分無意識にそういうところに行ってると思うんだよな。
下村: そういう形でミュージックをされている人はなかなかいないですよね?
中島: 日本ではすっごい少ないね。日本ではブラジル人があんまりいないから、ブラジリアンミュージックをやりたい人はそれをやっていたらいいんだよ。なんで日本人の自分がブラジル音楽をやるのかっていうのを考えなくていいの。みんなおーっていうし。こっちにいると僕がブラジル音楽をやると何で僕がやるの?って言われる。日本にいたらそんなこと言われることはないじゃん絶対。だからみんなマニアックに弾くことも多いし、いい意味でね。
下村: なるほど、たしかにそうですね。でもバンクーバーで活躍されている中島さんの音楽に、日本人の混ぜる能力が活かされているとは思ってもいませんでした。何か嬉しいですね。
中島: 沖縄音楽も日本にいた時は気にならなかったんだけど、気に入ったんだよね。この沖縄の古典音楽でコラボする美音(みおん)さんは去年の日本の三線コンテストのグランプリなんだよ。三線奏者は歌も必ず歌うので、三線と歌とギターでやるんだけど、今まで古典音楽をコラボさせた参考例がないから大変なんだよ作業が。未だにどうしていいか分かんないもん。
あ!あとね最近作ったバナナブレッドていうバンドは今一押し。このバンドは、60年代70年代の曲でメイン楽器はウクレレのコーラスグループ。僕はアレンジ中心の方。今日も朝からずっと曲アレンジしたり編曲してた。いつもは僕も全面に弾くって感じだから、このバンドではプロデューサーって感じ。面白い人たちを見つけてこういうコンセプトなんですけどどうですか?と話をもっていって人を集めて、1カ月くらい前から始まったところ。
常識とか国境とかを越えた自由で柔軟な感覚を信じて、自分が好きなことに、ただひたすらに正直で。
下村: だんだん中島さんが言う「好きだから」がわかってきた気がします(笑)。本当に楽しいが伝わってきます。音楽を混ぜるアイデアも、こうやったら楽しいかもって浮かんでくるんですか?
中島: そうだね。なんだろうね。あと1つのことをずっとやっていると飽きちゃうっていうのもあるのかも。 周りの人もそれを分かってくれているからコラボの声をかけてくれたり。こっちでやった人たちと日本に行って演奏したりとか。あと日本だったらブラジル音楽が好きな日本人と演奏、アルゼンチン音楽が弾ける日本人と演奏ってなるけど、カナダだからこそブラジルの人、イラクの人、アフリカの人、その国の人たちと演奏できる。やっぱりはじめからビートルズとか色んなものが混ざっているのが好きだから、スティングもすごく好きで、そういう人たちからものすごい色んな影響を受けている。
下村: これからのビジョンなどがあったりするのでしょうか?
中島: ビジョンとかは考える間がなくて、目の前のことだけ。その時その時面白いと思うことを考える。今は朝から考えてるバナナブレッドのアレンジとかって風に。でもたまに面白くないなと思う部分もあるじゃん。そういう時は 迷惑をかけないようにさーっと去るかな(笑)。
中島: ギターも見せちゃおっかな。これ普通のギターじゃないんだよ。オーダーメイドで弦が7本のギターを作ってもらったんだ。これで弾くとベースの人がいる感じ。ギターとベースと2人分一緒に弾いちゃうみたいな感じになる。
下村:どうして弦が7本あるギターを作ってもらったんですか?
中島: このギターは普通はブラジル音楽で使うんだけど、違う音楽にミックスしても面白いなと思って。美音さんとのコラボの時もこれ使う。
下村: ギターを持つと表情が変わるし、すごい一体感がありますね。
中島: ギターが1番しっくりくる、持つと本当落ち着く。
下村: 色んな楽器の中からギターを選んだのはどうしてですか?
中島: ビートルズの影響もあるけど、おじいちゃんがギターを弾いていたからというのもあるかな。ギターは教えるのもすごい好きで、今おばあちゃん2人組にウクレレを教えてて、もう3年くらいになるんだけど。来月発表会があって二人で楽しそうに計画しているのとかを見ると本当に微笑ましくって、そういうのにたずさわれるのがすごくうれしい。
下村: これまでの人生で最高の思い出は何ですか?
中島: 音楽面だとなんだろう、全部楽しいからなあ。たとえば東京で会場が満員になって、パーカッションの人と三味線の人と一緒にやって。そのライブが盛り上がるのがすごく楽しい。あと音楽以外では、旅行で秘境に行くのが好きで、インドネシアに本当に綺麗な島があって 、ここから三日ぐらいかけて行って、着いた時はすごい感動したね。 ただ一週間に一回しか船が来ないから一週間ずっとそこで過ごさないといけなかった。でもいろんな国の人と共同生活して楽しかったよ。
下村: 最後に、中島さんが一番大切にしていることは何ですか?
中島: 自分らしくいることかな。売れるとか人に喜ばれそうとかは考えずに、自分が良いと思ったものを正直にね。正直にいることが大切。自分の感覚を信じて、そこは譲らない。そこは1番大事にしてるかな。
下村: 今日は本当にありがとうございました。
ギターを手にしたとたん、優しく弾くように話しだす中島さん。そんな余韻を楽しみながら思うのは、多様な人種と文化の街だからこそ「日本人だからできる」こと「日本人だけどできる」ことの両方を楽しまずにどうするの? と問いかけられているようで、その言葉に枠がはずれていくような感覚が心に残るインタビューでした。
ライブ情報
Nakajima Duo + Banana Bread
日 時:9月30日 日曜日 8pm – 11pm
場 所:Cafe Deux Soleils 2096 Commercial Dr.
費 用:Music Charge $10
インタビューをして中島さんはバンクーバーという地で好奇心を持って、いろいろなことに挑戦されていることを知ることができました!そんな中島さんはとても輝いていて、わたしも好奇心をわすれずにいろんなことに挑戦し、生き生きと輝いている人になりたいなとおもいました!
下村 美香, Interviewer