先日張り替えをお願いしていたラウンジチェアを受け取りに行ってきました。

この椅子は生前義父が愛用していたアームチェアで、肘掛の部分が少しすり減っているのですが、座り心地はとても良く、腰をかけると昔の義家族の家にタイムトリップをしたような不思議な気持ちになります。わたしは古いものと新しいものの混在する場所が好きでたまりません。台所でも居間でも。誰かが大事に良く使い古した道具と最新の技術のつまったかしこい道具やピカピカの新しいものが一緒に合わさることで、昔と今や誰かと自分の生活がつながってその両方が良い具合に生かされるようで、何か別の味や心地や知恵がそこに生まれるような気がします。

以前にテレビで建築家の大島芳彦さんの話を見ました。最近よく耳にするヴィンテージマンションだったり中古の戸建て物件を味わいのある今風なデザインにリノベーションするというのもそうですが、わたしが興味を持ったのが「団地のリノベーション」。大島さんが手がけるリノベーションが、ただその団地という不動産の箱物を新しく美しくすると言うだけのものではなく、その団地のある街そのものを巻き込んで再生するというもの。古いものと新しいものが持つそれぞれの価値が一緒になることで新たな価値を持ったコミュニティが生まれ、場所が再生されていました。面白いなあと思って大島さんを調べていると、他にも古い雑居ビルがクリエーターが育つ複合施設になったり、昭和のアパートメントの風化を活かしたリノベーションだったり、ワクワクするものばかり。

この大島さんのことを知る前のこと、日本では中古の不動産物件の売買についての考え方や価値がバンクーバーとは違うよねと言う話をちょうどしていて、その時「どうして日本ではアパートメントを売り買いしないの?コンドを買うより手頃だろうに」って聞かれたのですが、そもそもわたしの中ではアパートって聞くと賃貸前提だし、まさかあのプレハブのようなアパートの小さな部屋を購入するという考えがあるなんて思いもしなかったので返事に困りました。だから大島さんのこのアパートメントのリノベーションの話を知った時、ああこれだったらいつか日本でもアパートメントの売買ってありえるのかしら、なんて思ったりしました。

ちょうど今企友会でもバンクーバーでの日系ビジネスの、これまで築き上げて来た世代と今・これからの新しい世代に起こるであろう変化のことや、将来の日系ビジネスのコミュニティの話をすることがよくあります。こういった日本の話を聞くと、これまでのものと新しいものがお互いの価値を活かし合えばバンクーバーでだって新たな日系ビジネスコミュニティの価値が案外うまい具合に生まれるのかしらって想像したりしています。

企友会理事

美香スミス

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