私の知り合いが日本に永久帰国して日本で働くと決めました。長年のカナダ生活で日本での就業に適応できるか心配で、念のため、お試しで2カ月ほど日本に滞在しアルバイトをすることにしました。その日本滞在最後の日、私が「どうでしたか?」と伺うと「やっぱり無理でした…。カナダに戻って仕事をします」と。日本の独特の仕事の進め方はカナダに長くいた人にはもう適応できないのでしょう。

私は仕事柄日本に年5-6回行きますが、空港に着いた瞬間、自分を日本モードに切り替えます。平身低頭で自分を押し出さず、目立たず、ソフトタッチで接する、これが基本です。理由は話す相手に決定権がなく、その内容を社内で前向きに検討してもらわねばならないからです。そのためには揉み手でニコニコ、駄話も適度に入れながらまずは人間関係を築き、「この人は信用できる」と思わせなくてはいけません。さもないと「あの人は嫌な奴だから」と社内で前向きに説明してもらえないからです。

ところが、カナダに戻ってくると真逆の論理とプレゼンテーションの世界。決定権を持っている相手にはとことん、押し切らねばなりません。スタッフの仕事をされている方もかなりの権限と自由度を持ちながら仕事を進めている方も多いでしょう。

カナダやアメリカは賃金が高いと言われますが、見方によってはそれだけ責任を持たされているとも言えます。日本の労働生産性は47年連続で主要先進国最低、OECD35カ国で20位と恥ずかしいぐらい一人当たりの生み出すものが小さいのであります。

これは何を意味するかといえば日本ではやりたい仕事はやらせてもらえないし、責任ある仕事やプロジェクトにチャレンジすることはほんの一握りの人に限られてしまうともいえるのです。

日本には10億ドル以上の価値がある未上場の会社(ユニコーンと言います。)は2社しか残っていません。アメリカには179社、中国に93社、インドにも18社あるのに、です。これは既存のしがらみに捉われ、前例主義でイマジネーションを発揮する機会にも恵まれず、日本人が日本人の能力だけで考えようとする限界を露呈しています。

日本には心地よい職場環境を提供してくれ、何かあればクレームするという社会主義的思想が跋扈してきています。昔はこれが日本経済全体を引きあげる力となったのですが、今の時代は逆にマイナス面が目立ってしまってきています。

人生なんて短いもの。そしてあなたの20代も30代も40代も二度と戻ってきません。悔いない社会人生活、そして振り返ってみればあの時、仕事で汗をかいたと思う時、充実感を感じるのではないでしょうか?

日本から数多くの若者がカナダに来て就労したり学校で勉強しています。が、英語の試験がクリアできず、チャンスを見出せず、泣く泣く帰国する人もいらっしゃいます。ならば泣いて目をはらす前に目が充血するほど勉強してみたらどうでしょうか?人生、後悔しないことが大事です。海外にはチャンスがたくさんあります。若者のチャレンジ、期待しています。

企友会理事

岡本 裕明

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