2019年3回目のばんてら、テーマは『日本人や日系人が次世代に伝えるべきものとは?』です。テーブルを囲んだ参加者のうち半数以上がばんてら初参加というフレッシュな雰囲気の下、様々な視点から活発な意見交換が行われました。

今回のテーマでは、『私達日本人、日系人が直面する社会環境の変化について認識を深め、そこに見出される可能性や、日本文化や習慣の継承といった点についてどう考えるか』というアウトラインに沿って議論を進めていきます。さて、どのような議論が繰り広げられたのでしょうか。

まずは、今回のポイントの1つである『社会環境の変化による影響』を挙げてみよう、というところから始まったのですが、ここで、良くも悪くも変化を受けない日本社会の在り方が浮き彫りに。特に、お子さんがいらっしゃる会員の方々からは、現金での給食費の受け渡しや連絡帳、紙媒体の成績表、部活など、日本の学校の変わらない部分に賛否両論が挙がります。非効率とも言える昔ながらの体制を維持していることについて、非常に歯痒く感じている方もあれば、人とのコミュニケーションの取り方として優れているのだと考える方もあり、議論は盛り上がりを見せました。

それでは、なぜ日本社会は変化しないのでしょうか。ここでは、「横並び」、「出る杭を打つ」、「細かいことを気にする」といった言葉が次々と出てきました。うーん、全体的にネガティブですね。これらは少し言葉を変えると「調和を大切にする」とも言えるでしょうが、どちらにせよ世界的な社会環境の変化にはついて行きづらい文化のようです。さらに、「既得権益を守りたい層が変化を阻んでいる」、「日本文化はそもそも封建社会だから変えにくい」という上下構造に由来する面も挙げられました。

ここまでの議論で、「日本社会は変化しないのでは」という結論にたどり着いてしまいましたが、日本社会はこのまま沈んでいってしまうのでしょうか。何か私達にできることはないのでしょうか。ここで、今回のもう1つのポイント、『日本文化や習慣の継承』の側面から切り込んでいきます。

継承のために我々在外日本人、日系人ができることとして、今回参加者の中から提案されたのは、主に「日本人が海外に触れる機会を作ること」、「和僑が繋がっていくこと」の2点でした。

前者は、日本にいる日本人を焦点としたアプローチです。日本では周りがみな日本人で同じ文化を共有しているため、客観的な目線を持つことはなかなか難しいのが現状です。私自身、カナダに住み始めてから日本人としてのアイデンティティをより強く持ち始め、日本人とは、日本文化とは、ということを考えるようになりました。文化を継承していくためには、文化を真に理解し、それを残したいと願う人が必要です。そのために、日本人が海外に触れる機会を作ることは非常に効果的だと思います。

それに対し、後者の「和僑」は、海外からのアプローチになります。和僑とは華僑の日本人版で、香港やシンガポールに和僑会が存在するようです。華僑のように文化を海外に輸出し、分散させ、点と点を繋ぐように他国の和僑会と繋がっていくことで、海外から文化を生き延びさせるというアイデアです。これはとても面白いと思いました。1点だけでは難しくとも、いくつもの点が繋がることで全体として文化が保存されていくのです。グローバル化という社会環境の変化にも対応する、今回のお題にぴったりな提案ではないでしょうか。

その他、継承のために企友会ができることとして、「子供ばんてら」や、ばんてらのライブ配信などの楽しそうな企画も挙がっていましたよ!実現の際にはぜひ参加したいと思います。

最後に、継承にあたっては、日本人(一世)と日系人(二世以降)とでの違いも議論されました。海外で育つとどうしても日本人としてのアイデンティティが薄まってしまいがちです。実際に日本人と日系人とで既にコミュニティが分かれてしまっているとのこと。文化の表層部分は伝えることができても、本質部分やメンタリティをどうやって伝えていくか、これは今後の大きな課題として残っています。

企友会ボランティア 本郷

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