[会員コラム] 時代は改善と変革、そして改革へ
kiyukai Admin2020-08-06T00:22:39-07:00先輩方によるWith Coronaをテーマとした素晴らしい記事が掲載されてきましたので、まだ新型コロナウイルスの影響が続く中ではありますが、本日はあえて焦点を「良いモノ」に当てて書かせていただきたいと思います。只、私は未熟者故、頓珍漢な事を書いてしまっていると思いますので、どうか温かい目で最後までご覧いただけますと幸いです。 私個人の意見ではありますが、流行はハイブランドや業界大手によって革新が行われ、他社がそれに追随する事により確立されていると感じています。例えば、車であればドイツ御三家のフラグシップモデルに搭載された新技術やデザインが下級モデルに反映され、その後他社によって追随される傾向がありますし、洋服であればハイブランドの新作がコレクションで発表され、その色遣いやデザインを取り込んだ商品がファストファッションブランドの自社工場にて大量生産され、一般市場に出回ります。SPA企業(製造小売)からしてみれば、アイデアがある程度まとめられている物を製造するので、無から有を創り出す手間がない分効率的であります。結果として、我々はハイブランドの物を身にまとわなくてもそのDNAがトレンドとして業界を牽引し、我々の日常生活に溶け込んでいるといっても過言ではないのでしょうか。 趣味趣向がモノに対する評価を大きく分けるものであると重々承知しているつもりではあります。しかし、小生意気ではありますが、ここ2、3年間に発表、又は発売された各ブランドやメーカーの製品の中で「これだ!」というものが見つからないのであります。何故なら、皆流行というビッグウェーブに乗るしかないといわんばかりに企業にとっての効率化が進められた結果、新製品より各々が持ち合わせていた威厳が感じ取れなくなり、「昔はよかったのになぁ」と只々思ってしまうのです。単に私がピッキーな奴か、時代の流れに乗れず、懐古主義者になってしまったのだろうと言われてしまえばそれまでですが、どうも牽引側が新製品開発で迷走を始めてしまい、改善(マーケットイン)か変革(プロダクトアウト)の二元的になってしまったのが原因ではないかと感じています。 マーケットインの例として、近年ハイブランドが行ってきたロゴリニューアルがそれに当たると考えています。以前は、ロゴとはブランドの顔であり、書体やマスコット、ロゴ形状の細部にまで各社のこだわりが見られ、伝統と威厳を持ち合わせた世界観がそこにはありました。しかし、SNSが普及するや否や、消費者によるウェブ上での再現性が重視され、多くのロゴがサンセリフ体に統一されることになりました。それにより、各ブランドのロゴからその個性を感じ取ることが難しくなってしまいました。 プロダクトアウトの例として、定期的に行われるマイナーチェンジやフルモデルチェンジによる車のデザインや機構の変更であります。新世代のドイツ御三家を見てみると、斬新すぎるそのデザインに残された昔の面影といえばブランドロゴくらいでしょうか。そのブランドらしさが殆ど残っていないのであります。そして、技術力を見せつけるかのような機能のてんこ盛りに加え、増設されたトランスミッションの数に首をかしげてしまいました。高速走行する分には超一流なのですが、街中で低速走行をする際、コンピューターによる迷いが奇妙な変速として現れ、乗り心地では前期モデルに軍配が上がるのではないかと感じさせられるほどです。つまり、消費者に対する謳い文句を増やすが為に、消費者体験が損なわれてしまっているのです。 マーケットインとプロダクトアウトについて書かせていただきましたが、私の意見を抜いてまとめると、前者では、既存ニーズと技術力という二つの限界がある為、自身のブランディングに差異が発生してしまったり、顧客の気づいていないニーズに応えることが難しくなってしまったりしています。後者では、既存しないモノを創り出す為、ニッチになってしまったり、顧客体験を蔑ろにしたりしてしまう可能性があります。 「じゃあ、お前はどんな物がいいのか」と質問があるでしょう。勝手な定義ではありますが、「良いモノ」とは、単に改善するだけでもなく、過度に変革するのでもなく、両者を上手く掛け合わせた改革が行われた末に生み出されるのものだと考えています。一般的に、初代iPhoneはプロダクトアウトの成功例に分類されていますが、当時既に存在していたインターネットとカメラ、そして電話を一つにまとめたに過ぎないと考えれば、顧客のニーズと技術力が上手く融合されたそれは改革と呼ぶに相応しいのではないでしょうか。 長々と私の考える「良いモノ」について書かせていただきましたが、勉強不足故、皆様のご意見やご教授をいただけますと幸いです。また、新型コロナウイルスの一日も早い終息と、皆様のご健康をお祈り申し上げます。 呉 以倫 P.S. ドイツ御三家だのハイブランドだのと書かせていただきましたが、私は10年前に倒産した某アメ車一筋であります。新型は1000馬力という怪物と化して来年復活するものの、夢はあるがロマンに欠けるなと感じています。そんな私はやっぱり懐古主義者なのでしょうか。