Japan Consulting Corporation / Japadog  President

田村 徳樹

Kiyukai Interview Yujiro Nakajima
BUSINESS DATA:  Japan Consulting Corporation / Japadog 社長 田村徳樹氏。1974年栃木県小山市出身。青山学院大学経済学部卒業後就職し、携帯電話のI mode広告事業、パソコン教室などの事業で独立を試みる。その後リクルート社に入社。約3年間の営業において好成績を得るも、30歳を目前にし「人生で一番ワクワクすることやろう!」と決断。その時「海外」「屋台」「屋台から果てしなく大きくしていこう!」それを想像されたときはワクワクして眠れなかったとのこと。2005年31歳ワーキングホリデーでバンクーバーへご夫婦で渡加。3か月後、JAPADOGの屋台を立ち上げる。オープンから4年後の2009年2号店そして2010年3号店の屋台をオープン。つづいて初のレストランを Robson st. に構える。2012年ニューヨーク店、2014年にはロサンゼルス店をオープン。サンタモニカピアの桟橋の上、遊園地の前で、絶好調に営業中。現在バンクーバー近郊で、レストラン2店、屋台を10店。そしてアメリカ  カリフォルニアの全13店を直営店で運営。
http://www.japadog.com

人を動かす、そのために。

本田: 田村さんが譲れないことは何ですか?
田村: 譲れないことですか、何だろう。例えば、お客さんに対しての思いとか気持ちを持って接するというのが薄れてきてて、これは本当僕ちょっと許せなくて。ここ半年くらいそういった傾向が見受けられてて、それがやっぱりクレームとかにもつながっていったりしますから。社内でもこれはもう根本的に自分たちの姿勢が間違っているよねって絶対やめようって伝えてます。少しづつですけどジャパドッグのお客さんが増えてきて、それをちょっと当然に思えてしまってたりするシーンもあったりするわけですよ、慣れてきちゃって。だけどやっぱり今のジャパドッグがあるのはずっとお客さんが来てくれてるからだし、僕がカミさんと始めたときも来てくれるお客さんがあって、そういう人が少しずつでも増えてきてくれるから今があって。そう言うお客さんへの思いを分かってほしいなっていうのはすごくあるんです。その思いが全然なくなると商売がつぶれちゃう。そういうのをくどくどと言ったりはしますね。 やっぱりお客さんがあってなんで。
本田: 田村さんの延長線上にはいつも人がいらっしゃるのですね。

本田: 田村さんは盛和塾でも学びを深めていらっしゃったと思いますが、田村さんが人を育てるために大切にされていることを教えてください。
田村: いやぁ、偉そうに語れないんですけど。僕のやり方や方向性も相手によって、これはダメなんだな、こういう方向性だと上手くいくんだなとか、僕も常に試行錯誤なんですよね。やっぱり僕も常に正しくないんですよ。しょっちゅう間違って。それで方向を変えたりして。変えることができないと社員もついてこれない、いなくなっちゃいますもんね。僕が最近すごく意識してるのは「この子たちを愛していこう」というそのスタンスだけは大事にしたいということなんです。やっぱり人ってどうしても色んなことあるじゃないですか。究極はその子をしっかり思ったうえで、どうするのかっていうのを常に考えたい。一人一人その子のことを本当に思ってみようと、そこに常に意識をもっていくようにすると、意外とすんなり、ここちゃんと注意してあげないととか見えてくるんです。常に愛を持ってその子のことを思って動いていこうと、ここ1,2年ですけど意識するようにしています。それでもやっぱり、もう諦めちゃおうかなっていう時もあるじゃないですか。だけど、うちの社員なんだからもうとことん、僕が諦めたら終わりだよね。
本田: 他にも沢山考えたりやることがあるトップの人が、諦めないでいてくれるのは想像以上に大変なことだと思います。
田村: なかなか、できてないんですけどね(笑)でもそこにしか無いと思うんですよね。人を動かさなければいけない、みんなで一つの目標に向かっていかなければいけないって考えるとしっかり心つかんでいかないと。まだまだですが、でも希望はそういう会社にしていきたいですよね。こんな偉そうなこと言っちゃうとまずいまずい(笑)
本田: 田村さんがおっしゃる人を動かすは人を使うと言う意味ではなく「人を活かす」ということなのですね。そんな田村さんの下で働けてるって羨ましいです。

本田: 社員を家族のように大切にされている田村さんですが、田村さんのご家族のお話も聞かせてください。たとえばご夫婦での役割分担みたいなのはどうやられているんですか?
田村: 明確にないんですけど、いつの間にか自然とカミさんは経理とかって役割ができてるような感じです。カミさんはスタッフのケアとか細かくて素晴らしいところはすげーなーって思ってて。僕はそれ以外のところを。だけど本当にいつも助けられています。
本田: リーダーとして会社のハート・モチベーションは田村さんの方ですね。
田村: そうですね。そこは僕の方で、カミさんはエンジン。
本田: そんな素晴らしい奥様とは長年ご家庭もビジネスもご一緒だと思いますが、何か秘訣はありますか?
田村: なんかもうこれが当たり前でできちゃったんで、そうじゃない夫婦の関係とか生活を経験してないのでわからないですが、ただ二人とも仕事が優先みたいなところはずっと同じで続いています。子供たちは二番、仕事一番みたいな。晩御飯のときも子供がいても仕事の話しちゃいます。最近はもう大きくなってきたんで、勝手に飯食っといてって感じで放置状態です。仕事の話が終わらなくて仕事で仕事の話、家でも仕事の話。
本田: お子さんに望んでらっしゃることとかありますか。継いでほしいとか。

Noriki Tamura

田村: 全然ないですね。カミさんはどうなんだろう、でも僕は全然そのつもりないって言ってます。子供は子供の好きなようにやってもらって。僕はそっちのほうが良いです。でも子供たちは興味あるみたいです。お前らにはやらせないからねって言ってると余計にやりたくなるのかもしれないですけどね(笑)
去年はじめてラスベガスで家族で商売してきたんです。ほんとに初めてだったかな。丁度ラスベガスで日系のイベントがあって。ほんとうはロサンゼルスのチームが行く予定だったんですが急に行けなくなってしまい、結局アメリカで働けるビザを持っているのが僕たち家族しかいなくて四人で行くしかないってなったんです。実は子供たち二人とカミさんで朝から晩まで屋台をやらせたんです。
本田: どうでしたか?
田村: 意外と結構できて、できるんだって感動してしまったんですよ。すごく楽しそうにやっているのを見て、あれはちょっと良かったですね。ロサンゼルスから車で荷物運ぶところからもう手伝わせて、これ持ってこい、あれ持ってこい、みたいな感じで。いい経験でしたね。
本田: さすが!毎日ご飯を食べてるときでもお仕事の話を聞いていたのは、奥様だけではなかったと言うことですね。
田村: でも子供達には自分たちの夢を持ってほしいなってすごく思うんです。Japadogは僕が考えてた夢なんで、彼らには彼らの夢を追いかけてほしいなと。
本田: お二人の子供がそんなご両親の姿をみながらどんな夢を追いかけるのか楽しみですね。

あきらめないことにこだわる。

本田: 順風満帆な田村さんですが、これまでにどん底のような辛いご経験のお話がありましたらお伺いしたいです。
田村: どん底ですか。いつもどん底のような気がするんですけど(笑)ニューヨークにお店出したとき、毎月大変な赤字を出したときはちょっとやばいなって思いましたね。それまでが絶好調でしたから、バンクーバーで屋台2つ店舗1つでイケイケでそこまで来て、怖いもの知らずというのでしょうか。そんな状況でニューヨークの結構良い場所にレストランを出したんですけど家賃が高くて、なのに全然売れなくてですね。そんなんじゃスタッフの子たちも嫌になっちゃうじゃないですか。それまでまともにそういう失敗をしたことがなかったので辞めに辞められないというか、ずっとその状態をひきずりながら2年間くらいのばしてしまって。あの時は本当に大変だったですね。

Kiyukai Interviewer Mika Shimomura

本田: その大変な状況の中で、まだやろうっていう気持ちの原動力は何だったんですか?
田村: やっぱりその時思っていたのは、ニューヨークで成功させて、全米でやっていきたいなっていうのがあったので、簡単にそのプロジェクトを辞めるわけにいかなかったんですよね。それが逆に仇となったんですけど。そこで優秀な経営者っていうのはスパっと半年くらいで見切りをつけて次の展開をって切り替えるんでしょうけど、僕はできなかったんですよね。でもなんか常に学ばせてもらってるって感じですね。人の問題もやっぱりあるじゃないですか。だけどどれも乗り越えないと上に行けないんだなっていつも思うんですよね。社員の人たちのためにも何かあっても大丈夫な体制を考えて、という繰り返しで少しずつ成長していかなければならないのかなって思います。底があるから乗り越えて学んでどんどん上に行くんでしょうね。やばいな、本当のどん底がきたら耐えられないだろうな(笑)

本田: 夢を実現させるために一番大事なことは何だと思いますか?
田村: 僕はまだ実現の途中だけど、この前耳にしたことで「粘り強くあきらめないこと」。それを聞いて、あ、そうだよなって思って。
本田: 難しいことですね。
田村: はい、でも一番大事だけど、それだけのこと。ずっと思ってればいいじゃないですか。諦めなきゃいいんですもんね。そっか、それはできるなって思うんです。でもそれは何年後とかになるのかもしれないんですけど。有名な人たちがみんな同じようなこと言っているなと「夢を実現するために大切なことって粘り強く諦めないこと」って最近わかったんです、そういうことかって。
本田: どういうことなんですか、私も知りたいです!ただ思い続ければいいのでしょうか?どうしても自分の能力だったり、お金のことだったり、人のことだったり、ストレスだったり、いろんな理由で諦めてしまうことが多いと思うのです。
田村: もちろん多分そこにはどれだけ夢や目標に向かって努力できたかっていうのも入ってくるんでしょうけど。途中で諦めたらそこで終わりじゃないですか。それでその夢は終わりじゃないですか。常にそれに向かって動いていく、諦めないでやっていく、それが一番重要だと。それぐらい成し遂げたいってことですかね。

本田: 原動力のお話にもありましたが、田村さんのその「成し遂げたい」とは何ですか?
田村: “Delivering dreams, happiness, excitement to the world through hotdogs” です。これがすべてのミッションなんです。これ追いかけないんだったらジャパドッグ辞めましょうと。明日にもやめましょうっていうぐらいのものなんで。これを実現するためには、どれくらいの企業規模を目指そうかとか。じゃあとりあえず100店舗やろうと、100店舗でどれくらいの社会的インパクトが出るかわからないけど、まずはちょっとやってみようと。

Kiyukai Interviewer Mika Shimomura

そうすればちょっと夢くらいは与えられるんじゃないの、少しの人に、とか思ったりするんですよ。100だと足りないかもしれないんですよ、もしかしたら。世界には届かないかもしれない。そのときはもしかしたら、100を到達したら、300やってみようかってなるかもしれないですし。
本田: 社員の方達にもそれを伝えられているんですね。
田村: またこんな話を言ってるって思われてるかもしれないんですけど、また言いますって感じで伝えてます。でもそれが会社の存在意義でもあるので。逆にそこで共にしたいですよね。そこだけは握手でしっかり、このためにやっていくんだよと。
本田: そこを掴んでくれている人たちがいらっしゃるんですね。
田村: そうですね。強く思っている子たちが必然的に上に上がっていく組織体系。そうやって先導してくれる子たちが上にあがっているなって感じますね。
本田: ということは、必然的にその人たちも夢を諦めずに頑張っているってことになるのですね。

今居心地よいと思う場所の一歩先にあるかもしれない「もっと心地よい所」を味わうために行く −−− ワクワク生きるということ。

本田: まだ夢が持てないとか見つからない人へアドバイスをいただきたいです。
田村: たしかに何やっていいか分かんないって時ありますよね。そう考えると僕もそういう時期あったんですよね。独立しようって思ったけど何やっていいか分からないとか。結構長い期間あったんですよね。
本田: その時はどうされたのですか?
田村: どうしよってずっと考えていましたよね、ずっと。一人で考える時期もあって、あ、これダメだな、何にも分からない、どうしていいか分からないって。それが過ぎると、人に聞こうってなって、人に聞きまくって、色んなヒントを得たりして。フリーターも長かったですよね。逆にそういうのがあった方がいいんじゃないかなって思ったんですよ、当時。まあ夢がなくても普通じゃないのかなって思ったりします。逆にそれが良いプレッシャーになって、そのうち切り開いていく気がするんですよね。なくても大丈夫だよっていう、出来るよそのうちって。
本田: 切り開いていくきっかけはありましたか?
田村: きっかけか。ダラダラしている自分に嫌になったりするじゃないですか。やりたいんだけど、何やっていいか分からない。じゃあ、本に求めるかって、でも本にも書いてない。考えてももう出てこない。じゃ動くしかない。色んなアルバイトをしてみるとか。そうもがいていくうちに、なにかしら見えてくるんじゃないかなとか、好きなものが見えるとか、やりたいものが見つかるとか。でも今そう考えると、なんか何でもいいけど一生懸命やってみるといいのかもしれないですね。
本田: 田村さんは本当に「諦めない」のですね。ずっと動き続けてらっしゃっる。何もない時期ですら何かしら動いてらっしゃって。何もかも投げ出してラクして生きようと思うことはなかったのでしょうか?
田村: それはないですねぇ。つまんなくないですか?過程って楽しいじゃないですか。ホットドッグもどうやったら売れるかなって考えてるときがやっぱり楽しいじゃないですか。そこも味わいたいんですよね。そこにすごく醍醐味があって。これもやっぱりミッションを掲げて、どうやったら上手くいくんだろうってみんなでああだこうだって考えてそれが楽しいじゃないですか。

Kiyukai Interview Yujiro Nakajima

本田: 田村さん自身がワクワクして生きたいと思っていらっしゃていて、ミッションそのものが田村さんの生き方なのですね。
田村: いつ死んじゃうか分からないじゃないですか。って考えると、最近は実現して死んでいきたいなって思いますね、せっかくなら。ワクワク生きたいですよね。
大変なこともあるし、壁は多いかもしれないですけど、そのワクワク感が乗り越えられる原動力なんでしょうね。おそらくそうですね。
本田: ワクワクよりリスクの方を大きく感じてしまうことがあります。安全で嫌な思いをしなくてもすむ心地良いところに居続けたくなってしまう。
田村: だけど分かんないじゃないですか、もっと心地いい所があるかもしれないし、だってまだ味わってないから。僕は追いかけていきたいですよね。だって人生の中で味わえるのなんてあんまり無いじゃないですか。そう考えると、実は今よりもっと素晴らしい楽園があるって思うんです。いや、分かんないですよ、僕はそう思うんです(笑)
本田: 今私たちが心地いい、ここに居たら楽だと思ってるところよりも、じつはもっと面白くてもっと楽しい楽園があるって考えると、ここに居るのがちょっと勿体ないかもと感じます。そんな風に考えたことってなかったです。今居るところが一番心地いいって思いこんでる人たちは沢山いると思うのです。でも田村さんは大変だけれども、この先に何かがあると想像していらっしゃるからワクワクされていらっしゃるのですね。
田村: だけど、その別のところが本当に心地いいかどうか最終的には行ってみないとわからないよね。全然楽しくないって思う人もいるかもしれないなって、「のりさん、全然普通じゃないですか」って言われそうな(笑)どうしよう、そしたらまた違う方行こうって。

本田: 今までやって良かったことや逆に後悔されたことはありますか?
田村: 後悔ですか。そうですね、あんまり後ろ見たくないので後悔はあんまりないですね。楽しいこと考えたいし、やっていきたいです。失敗は前向きにとらえて、それはそれで仕方ない、でも次はもっと違う方法で。だから後悔することはあんまりないですね。それで言うと新しい挑戦っていうのは常に自分たちを成長させてくれるんで、色んな問題を抱えるんですけどニューヨークでやったこともLAでやったことも、やって良かったことですね。チャレンジは常に僕だけじゃなくて、ジャパドッグで働いてくれている人にとっても、すごく刺激にもなったり、勉強になったり、成長につながることなんで、みんなのためにも良かったなって思います。だからチャレンジは常にしていきたいなっていうのはありますね。やって良かったなぁって、これからもやっていこうって。たとえば今は北米中心なんですけど、北米以外のアジアとか違う土地でジャパドッグをって準備していこうと考えてます。

Kiyukai Interview Yujiro Nakajima

「少年のような目をした」という言葉がこれほど似合う人はいないと思うほど。インタビューのお話の中で垣間見られる少し照れたような笑顔や自分の信じたものをひたすら追いかける真っ直ぐな視線から、子供の時に時間を忘れるぐらいに何かに没頭したあの頃をふと思い出しました。
田村さんが追いかけ続けるワクワクする生き方は、誰しもが奥深くにじつは持っているのかもしれません。

今回田村さんとお話しをする機会を頂け、とても光栄でした。「ワクワクが原動力」という言葉の通りとても明るく、あれだけ大きなことをされているのに始終とても謙虚にお話をされていた姿が印象的でした。全ての物事をポジティブにとらえ、果敢にミッションに向かってチャレンジを続ける生き方に感銘を受け、大切なことを学ばせていただくことができました。また、どんなときも周りの人を大切にされている田村さんだからこそ、多くの人に慕われ今のジャパドッグがあるのだとひしひしと感じ、改めて人とのつながりを大切にしたいと感じることができました。素敵なご縁に感謝しております。ありがとうございました。

立命館大学経営学部 本田 安澄, Interviewer

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