2021年1月27日、オンラインで2021年企友会・懇話会共催新春懇談会/交流会−業界の声を聞くパネルディスカッション−を開催しました。連絡協議会議長もつとめる岡本裕明企友会理事をモデレーターに、バンクーバーの日系ビジネスを代表するような業種に携わる方をパネリストとしてお招きしました。

 

世界中を巻き込む未曾有のパンデミックに翻弄されながらも、工夫を重ね、コミュニティのニーズや期待に応えようと尽力されているパネリスト達の苦労話、新年度への抱負や見通し、または戦略など「業界の方の生の声」を聞く絶好の機会となりました。

 

イベントにご参加いただいた、羽鳥在バンクーバー日本国総領事からも感想をいただきました。パネルディスカッション後は、パネリストを含む参加者全員に小部屋に別れていただき、コロナ禍でなかなか顔を合わせることがない中、企友会と懇話会の各会員等が相互に近況を共有する時間となりました。

 

《日時》

 2021年1月27日 18:00-19:30

《参加者》

 59名

《パネリスト》

貿易商社業種:吉浦隆行氏(Itochu Canada Ltd)

小売業種:猪田雅公氏(Suzuya Japanese Market)

飲食業種:増田新梧氏(Kamei Royale Japanese Restaurant Group)

留学業種:田中寛弘氏(Jpcanada留学センター)

旅行業種:山田圭哉氏(HIS Canada Inc)

不動産業種:フレッド吉村氏(リマックス不動産)

《モデレーター》

岡本裕明理事(企友会)

 

開会の挨拶(谷口会長/企友会)

このようなパネルディスカッションを企友会と懇話会の共催という形にて新春懇談会で催すことができ、今回多くの方々にご参加いただくことになりました。今日はバンクーバーのビジネス社会の中から6つの業界で活躍しておられる方々にもパネリストとしてご参加いただいています。お忙しい中参加をご快諾いただきありがとうございました。今現在は極めて厳しい環境ではありますが、いろいろな話をお聞かせいただきたいと思いますのでどうぞ宜しくお願い致します。

 

①ここまでどうやって乗り越えてきたのか

吉浦氏:

好不調は商品/業種によって全く違っている。当社では衣料品やコンビニ(ファミリーマート)は苦戦、木材や建材は好調。金利引下げ(4%→2%)により住宅関連事業が伸長した効果が大きい。

猪田氏:

店内に入れる人数に制限があるので客数は減ったが、まとめ買いをするお客様が増えたので売上は増えている。ジュースなどコンビニで買えるようなアイテムの売上げは減っている。内食へシフトしているので食材の販売は好調。

増田氏:

Kamei Royale周辺のオフィスでは、出勤者数がコロナ前の1/10以下になっている。そんな状況でも営業内容やメニューは変更していない。お客様の欲しいものは欠かさないよう、また従業員の雇用確保に努めている。

田中氏:

当初6月末までだったカナダ政府の国境閉鎖方針が延長されて、一時は廃業を覚悟した。10/20から学生ビザの発行が再開され、その後は留学できる条件は整っている。国境閉鎖時点で留学を予定していた200人弱のうち、30〜40人がキャンセル、1/4〜1/5の人がまだ様子を見ている状態。語学学校のオンラインの授業は集客が良い。

山田氏:

インバウンドは現在ほぼゼロ、アウトバウンドは3月中旬以降にキャンセルが殺到した。日本への一時帰国需要は多少出てきた。

フレッド吉村氏:

8〜10月は不動産の販売が回復した。春の販売ピークが秋にずれてやってきたと見ている。サレーやラングレー辺りの郊外型物件の動きが良く、ファーストバイヤーによる購入が多い。逆に都市部のコンドミニアムは動きが悪い。通勤の必要性が薄れてきたのが原因。投資目的のマーケットは中国からの送金停止措置の影響からほとんど売買が無い状況。ノースバンクーバーやバーナビー辺りの一戸建てが見直されている。

②ポストコロナの展望

田中氏:

語学学校は対面+オンラインで授業をしている。対面授業は一度に受講できる人数が制限される。留学には語学の勉強以外(人との交流など)の側面もある。今のような制限が続くと語学学校の経営も苦しくなるのではないか。今までとは異なる提案が必要だと思う。

増田氏:

デリバリーでの販売が伸びているが、費用が割高になるのが問題になっている。二極化が指摘されているが、外食に関しては価格はあまり重要な要素ではないと考えている。デリバリーは配達途中での品質安全管理に不安があり、衛生管理を厳しく行なっている店舗で食べるのが安全との政府コメントがあった。

山田氏:

インバウンドの受け入れに関してはガイドサービス会社のレイオフやバス会社の車両縮小などがあり、従業員が転職を模索し始めているのでコロナ禍からの回復後に戻ってくるかどうか難しいところだが、回復後に一気にお客様が戻ってくるとは考えにくいため、今後徐々に客足が戻れば受入れが出来ない状況にはならないと考えている。HIS本社では事業の多角化が進み、エネルギー(電力販売、バイオマス発電)、農業、外食産業などが始まっており、海外支店も同様な動きを考えている。

アウトバウンドについてはオンラインの業者の実績が伸びているが、今回のような混乱状態にでは予約の変更/キャンセルの手続きにおいて我々のような実店舗業者に強みがあり、お客様が戻って来ると思っている。

またバーチャルツアーによって潜在的な需要を喚起するようにしている。今後は人と人、コミュニティーとコミュニティーを結びつける商社的な役割を増やしていきたい。

フレッド吉村氏:

香港の住人に二重国籍が認められないことになったものの、バンクーバー不動産市場への影響は限定的だと考える。カナダ政府は2021年に40万人の移民受入れを計画しているが、直ちに住宅を購入することには繋がらないと推察。人口増加に対する住宅の供給は不足しているが、物件が動く価格帯(60〜70万ドル)、動かない価格帯(200万ドル超)、一般市場より安い賃貸物件など3極化すると予想している。

猪田氏:

オンラインショッピングの事業化を検討しているが、冷凍品などのデリバリー方法に課題が残る。今後は調理済食品の販売が伸びると予想している。新規事業として農園の経営を考えている。

吉浦氏:

ネット利用が普及した今でも、細かい情報戦に商社の強みがあると考えている。コロナ禍が収まった頃には住宅から旅行などへ消費者のお金の使い方が変わると思う。

 

羽鳥総領事コメント

外務省は在外の日系ビジネスがどういうことに困っているのか関心を持っている。日本国政府も在外の日本企業や日系団体の支援を考えているので、それに向かって広く情報発信していきたいと考えている。

 

閉会の挨拶(田村会長/バンクーバー・ビジネス懇話会)

長時間にわたり貴重なお話をいただきありがとうございました。コロナ 禍という極めて深刻な状況の中でも、今日のお話を伺っても同じ業界の中でもどんどん伸ばしているところとそうではないところが出てきています。そんな中でもひとつだけ変わらないことがあるとすれば、どんなことになっても健康であれば自ずと道は拓けるのではないかということです。今日はどうもありがとうございました。

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