私がバンクーバーに着任した1992年、バンクーバーの某邦銀に着任の挨拶に行った。支店長が「岡本さん、日本に親会社を持つバンクーバーの企業は軒並み赤字ですよ、7-8割かな」と新人の私に衝撃の一撃をくらわした。だが、「ということはここで成功する企業は日本でもアメリカでもどこででも成功するということですよ」と。なるほど、この銀行は私に試験をしているのだな、と理解した。

あれから30年。確かに当地のビジネスは厳しいのだが、やり方によってはかなり儲かることに気がついた。難しい理由は人口が少ない、よって人口密度的にはエンドユーザー向けのビジネスは日本の数分の1の売り上げ水準だということ。一方、明るい理由はそれゆえ全般的なコストが日本と比較ならないほど高く、また消費者はコスト増を理解し、値上げも論理的範囲なら受け入れるということだ。

先日、ネットでニューヨークのラーメンは2500円で高い、と話題になった。珍しい話ではないが、たまたま有名人が発信したネタをいろいろなメディアが拾ったことで展開された。その中で某全国区のテレビ局が23時台のニュース番組で「日本のものを輸入しているから高いんですよね」としゃあしゃあと言ってのけた。これは違う。麺は北米産だし、スープは様々だけどスープをそのまま輸入することはない。人件費と場所代、それに適正利潤を乗せているからということに気がついてほしかった。

つまり、北米ではラーメンに20ドル払うことをためらわない。選別はされるが勝ち抜けばよいということだ。高いクオリティの仕事してお客さんの信用を勝ち取れば売り上げは上がり、必ず利益につながるはずなのだ。

私はFair Share 理論を展開している。例えば自分の家から半径2キロ以内にガソリンスタンドが3軒あるとする。その圏内には1万人が住んでいるとしよう。そこでクルマを持つ人は40%で月に平均800キロ乗るとする。これでガソリンスタンドの売り上げは推測できる。つまり、(1万人x40%x800KM÷12KM/ L x 1.6ドル)÷3軒=142000ドル/月となる。

なぜ、こんな計算が出来るかと言えばガソリンは何処で入れても同じ品質で差別化しにくいからだ。だが、あるガソリンスタンドで価格の5%分のポイント還元がありスーパーで買い物ができるとする。するとこれはFair ShareからUnfair Shareになり、計算上のシェアより多くの売り上げをゲットすることができる。

これがマーケティングで言う差別化だ。

カナダを含む北米はフェアな代金を払う世界だ。よって売り手の製品やサービスが理にかなったものであれば正しい価格付けのもとでビジネスが出来るということになる。ところが日本は製品の品質よりも価格競争や大手による中小潰しが日夜行われている。どちらがUnfairだろうか?

ビジネスの観点からするとこの落としどころさえ分かっていれば日本より北米の方がはるかにビジネスはしやすい。そしてカナダの10倍の人口を誇るアメリカは当然ながらカナダの10倍の売り上げも潜在的には期待できることになる。

あくまでも計算上だが、モノの見方を変えるとこうも見える絵面は違うということを是非とも知ってもらいたいと思い、紹介させて頂いた。ご参考になればうれしい限りだ。

企友会理事 岡本裕明

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