10月26日火曜日、初の試みとなる、バンクーバー企友会とトロント新企会との共催企画「東西をまたにかけるビジネスパーソンのコロナ禍での挑戦」がオンラインで開催されました。
今回はバンクーバーとトロントの両拠点で活躍するビジネスパーソン2名(満木氏、吉田氏)をパネリストにお招きし、コロナパンデミックをどう乗り越えてきたか、またコロナ禍でどのように成功したか、その裏にある失敗や当時の想いについて伺いました。セミナーには、バンクーバー、トロント、日本から計38名もの方々が参加して下さり、前半はパネリストのプレゼンテーション、後半は質疑応答という座談会形式で進みました。
お話のハイライト
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パネリスト1:IACE TRAVEL INC. ジェネラルマネージャー 満木貴広氏(Takahiro Mitsuki)
コロナ禍になり、ふと2001年アメリカ同時多発テロの頃に当時の社長から言われた「この困難は全ての会社に与えられた新しい条件なんです、その条件の中で何ができるのかを考えていきましょう」という言葉を思い出しました。コロナ禍では、まず経費を見直し、さらにコロナが収束した後、どういう会社になっていたいかを描き、それに向かって行動し始めました。具体的には、新規のお客様獲得に向け、SNSを使用した会社の認知度アップを図ったり、既存のお客様には、困っていることや不安に思うことがないかをヒアリングし、我々が求められていることは何かを深堀したりしました。要望があれば、自社以外のサービス、例えば食材デリバリーなども行いました。人材面では、コロナ禍でも社員の解雇は行わず、配置転換で対応していました。従業員とのコミュニケーションも、危機感を煽るだけでなく、将来の明るい像(コロナ後どうなっていたいか)も同時に共有ていましましたね。まず自ら率先して挑戦する姿をスタッフに見せることで、刺激を受けたスタッフは、新たなことにチャレンジしていこうという気持ちになってくれると思います。今後は、フットワークを軽く、大手がやらないことをやっていこうと考えています。ちょっとしたことでも気軽に質問できる、地域に根付いた会社を目指していきたいですね。
パネリスト2:Ramen Marketing Corp. (ramen RAIJIN) 社長 吉田洋史氏 ( Hiroshi Yoshida)
コロナ禍、会社存続のためにいろいろ試行錯誤した結果、自社デリバリーサービスの構築とそれに耐えうる商品の開発(冷凍ラーメン)に辿り着きました。そこに行きつくまで、お弁当の宅配強化(UberやDoorDash使用)、紙袋へメッセージ書き、さらにYouTubeの撮影などチャレンジしてみましたが、残念ながら期待したほどの結果は得られませんでした。そもそもデリバリープラットフォームは表示される配達可能地域が限られおり(半径何m)また手数料も取られます。商圏をいかに突破するかがコロナ禍における問題の本質だと捉え、自社デリバリーサービスを作りました。これまで自社デリバリーはやったことがなく、飲食店で培った経験や知見を活かせないかと突き詰めて考えました。通常のレストランは、お客さんが来店し、店側が注文を聞き商品を提供、どうだったかとコミュニケーションを図るのが一連の流れです。その流れを自社デリバリーに置き換えると、お客さんからSNSを通して来店してもらい、オンラインストアで商品を注文し、自社デリバリーで商品を届ける、最後にお店側からコミュニケーションを図る、となると考え一つ一つ構築してきました。お客さんとGoogleリアルタイムロケーションで現在位置を共有したり、メールよりもテキストメッセージを使ったりして、密にコミュニケーションを図って関係性を築いています。加えて、一般的に飲食店はデジタル化が遅れていると言われていたので、今回デジタル化を推し進められて良かったです。未だ、コロナ禍で上手くいったかは分かりません、現在も渦中にいるという認識でいますね。
※冷凍ラーメンは、トロントだとオンラインオーダー。バンクーバーだと、Fujiyaさん、Sakurayaさん、Izumiyaさん、Takenakaさん、コンビニ屋さんで購入できるそうです。
また、セミナーの後半では、参加者から以下の質問がありました(一部抜粋)。
Q どれくらい迅速に新たな次の取り組みを始められましたか。
満木氏:当初は、そこまで長引かないのではないかという認識でした。2020年5月頃から動き出しました。迅速に動けた理由は、自分の持っている武器、普段から社員とのコミュニケーションを行っていたので(社内の風通しや社内営業)、それが今回役に立ったと思います。
吉田氏:コロナは長期化することを前提に考えていました(最悪のケースを想定していた)。すぐに行動を開始しましたね。経費の見直し、パートの一時解雇、社員は継続雇用でした。すぐにでも攻めに回らないと社員の給与を支払えないと危機感がありました。コロナの前から、毎月新しいメニューを出すなど(2019年)、常に新たなことへチャレンジする社風はあったと思います。
Q スタッフへの声かけ、遠距離のスタッフへのケアはどうしていましたか。
満木氏:毎日ミーティングする機会があったので、その中で世間話をしていました。感覚ですが、オンラインはオフラインよりも1.5倍ほど丁寧なコミュニケーションが必要だと思います。
吉田氏:オンライン飲み会やスタッフの自宅店舗間の送迎をやりました。月に1度のミーティングでは、資金繰りのことまでスタッフへ説明したりもしました。
Q コロナ禍で新たに必要となったスキルにはどう対応しましたか。
満木氏:スタッフに通常業務を任せ、情報収集や総務的な面(政府へ申請など)は自分が行っていました。ただ他のスタッフも積極的に情報を拾って教えてくれましたね。
吉田氏:バンクーバーで卸売業(新ビジネス)を始めるにあたり、新たに人は雇っていません。デジタル人材は、もともと広報だった担当者をデジタルマーケティング(Shopify)専門にしました。政府からの発信(補助金など)については、自分で情報収集し申請していました。現場には任せられる社員がいたので、情報収集する時間ありました。
Q 今後の展望や競合の台頭について教えて下さい。
満木氏:今後は、サービス面をさらに強化したいと思っています。弊社は、身軽で柔軟な対応ができることが強みだと考えています。また、チャレンジを推奨する社風のため、メイン事業以外にも、他サービスを推し進めて行ける環境下にあります。とある調査では、対象の約70%は今後もツアー会社を使いたい結果が出ており、コロナはサービス向上のチャンスだと考えます。
吉田氏:今後は中食を強化したり、出店計画に郊外が入る可能性もありますね。コロナを機に、人の行動変容が起きた思います。コロナ収束後も、人々の行動はコロナ前に戻らないかもしれません。ただ変化を上手く捉え、どこにチャンスがあるのを見間違わなければ、今後もチャンスがあると思っています。冷凍ラーメンについては、競合が増えることは嬉しいことだと思っています。まずは、商品の認知向上が大事だと考えているので、作り方を聞かれれば、こたえたいと思います。大手企業の市場参入に対する準備や、他のメリットを鑑みて、現在は製法特許を申請中です。
Q カナダ東部(トロント側)と西部(バンクーバー側)とで、何か異なる特色はありますか。
吉田氏:バンクーバーの方がラーメンの競争率は激しいかもしれません。価格面を言えば、バンクーバーは値上げへの反発が少しトロントよりも強いですね。トロントのほうが比較的値上げに寛容かもしれません。ただし、バンクーバーは、一度味を受け入れられると、他へスイッチされる可能性は低いと思います。
満木氏:東部のほうが、日系企業が多くありますね(特に自動車関連)。ただ、それらの会社はトロントから車で2時間程離れた場所にあり、駐在員にとって少し不便なところがあると思います。実は、約3年~5年程で入れ替わる駐在員に対して今後ビジネス展開ができないかと考えています。不動産情報の提供、子供の教育関連、日本人らしい引っ越し・清掃サービス、など喜ばれるかもしれません。
Q 日本と比べ、カナダでビジネスをしていて感じることはありますか。
満木氏:カナダのほうが、お客さんとの距離が近く繋がりも強いです。カナダで生き残るには、大手企業がやらないサービスに力をいれていくことが大事だと思っています。詰まるところ、アナログの強化ですね。お客さんの些細な疑問に、我々が誠心誠意対応していくことで他企業との差別化を図ることができると思います。日本だと当たり前に思われそうですが、カナディアンは日本のきめ細かなサービスを評価してくれますね。
吉田氏:カナダのほうがコロナ禍のビジネスで言うと良かったと思っています。また、2か国間の物価の違いやラーメンの価格競争面を見て、カナダのほうがビジネスをやりやすいと思います。今後は、カナダから日本へ進出ということは考えてなくて、可能性を挙げるなら、日本以外の国かもしれません。
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コロナで影響が特に大きかったであろう2大ビジネス:旅行業と飲食業を代表する満木氏、吉田氏から、大変貴重なお話を伺うことができました。異なる業界のお2人ですが、共通点に「チャレンジし続ける」ことが挙げられると思います。元よりお2人は、コロナが起きる前から常々ビジネスのヒントを探されたり、ビジネスへの種まきをされていたりしていて、コロナ禍でそれらが加速していったという印象です。
今回のセミナーは、東西共催企画の記念すべき第1回目でした。コロナの影響を受け、世界のあらゆる領域でデジタル化が進みました。そのポジティブ面を挙げるならば、オンライン上で地域・国境を越えて誰もがつながることができ、新たな交流の場や学びの機会が増えることだと思っています。第2回以降の共同企画については、決まり次第情報発信します。Twitter、Facebook、Instagramも覗いてみてくださいね。
企有会ボランティア 柴田郁