本を読むのは小学生の時から好きで、お風呂の中でも読んでいた時期もありました。カナダに来てからは、大学時代に大量の教科書を英語で読むことに追われ、また移り住んだ20年前は日本語の書籍も今ほど簡単に手に入るわけではなかったため、いつしか特に日本語の本を読むことからは遠ざかる傾向にありました。
最近読んだ本はオバマ元米国大統領の自伝 A Promised Land でした。この768ページある重たい本を読み終えるのにかかった時間が数か月、図書館から借りていたこの本を何度借りる期間をリニューアルしたことか。この本を選んだ理由は、図書館から借りられること、そして興味があったから。英語であったこと、政治的なトピックであったことも、読み終わるのに時間がかかった理由だと思います。とりあえず読み始めたものを完読できたことに満足しました。
今回の遅々として読み進まない読書中にふと、後何冊本を読むことが出来るのか、という思いがよぎりました。私は周りにあるものを片っ端から読むタイプではありますが、これまでは、折角カナダに住んでいるのだから、積極的に英語の本を読もうと思いそう努めていました。普通にアクセスできる本、図書館に置いてある本で十分読書を楽しむことが出来ると思っていましたし、そうしてきました。しかしながら年齢的には確実に折り返し地点を通り越し、無理に英語の本を読まなくても良いのではないかと初めて感じました。そして、電子書籍の存在。物質的に本を取り寄せる必要のない電子書籍、旅先にも簡単に持参でき、引っ越し等将来ものを処分するに困らないこのテクノロジーをどんどん取り入れていけばよいのでは。これからは無理せず読みたいものを読みたいときに好きなだけ読む。それでいいのではないかという結論に達しました。
そして、ある日、本の最初のページにあった
『この作品の全部あるいは一部を…また、有償・無償にかかわらず第三者に譲渡することはできません。』
という文章に目が行きました。この電子書籍は、紙の本と違って、家族や友人間で簡単に貸し借りをすることができません。簡単にというか、基本的にはやってはいけないことなのです。そうすることで著者の権利はもちろん守られるわけですが、本を共有することによって得られる経験の共有、第三者へ読み継がれるということがこの電子書籍にはないのです。そう考えると、ひどく高価なもののような気がしてきます。
いずれにしても、これからは自由に本を読む、というスタイルで行きたいと思います。秋も深まり、日も短くなり、より多くの時間を屋内で過ごすことになります。
今年の秋は、電子書籍との関係を深めていきたいと思います。
企友会理事 澤田泰代